ろう児や者に関わる精神保健や心理臨床を中心に、2008年からは障害学とろう者学を主な研究関心テーマとして、研究と臨床に取り組んできました。最近は、研究者生活15年を迎え、手話言語学、特にろう社会における社会言語学や言語習得理論に関心を持っています。
質的研究、量的研究、理論研究などどのような様々な調査方法のトレーニングを受け、論文を書いてきましたが、中でも量的研究を得意としています。主に使う統計ソフトは、SPSSです。Rも使えます。
精神保健や心理臨床、中でも特に精神保健の現場における手話通訳のあり方やろう者をマイノリティとして捉えた上での支援のあり方について研究を行ってきました。その後の研究では、ろう・難聴者を文化言語的マイノリティとして理解したうえでの精神保健サービスやソーシャルワーク支援のあり方についても検討を進めており、ろう・難聴者が利用する精神保健サービスの経験や制度上の課題を実証的に分析した研究として、Takayama & Crowe(2024)による米国メリーランド州の精神保健サービス利用に関する研究などがあります。
大学時代は、ろう学校に通学する中高生の補聴器装用についての心理的葛藤に関する研究にのめり込んでいました。大学で初めて、情報保障を受けた経験から、ろう・難聴学生が直面しやすい葛藤について、聴力障害者情報文化センターが発行した「聴覚障害者の精神保健サポートガイドブック(高山, 2005:聴力障害者情報文化センターなどで閲覧可能)」に寄稿しました。その後も、ろう・難聴学生の教育経験や支援サービスとの関係について関心を広げ、学校ソーシャルワークサービスの経験を分析した研究(Takayama, 2020)などを通して、教育現場における心理社会的支援の課題について検討してきました。
大学院博士一貫課程に進学したばかりの時は、ろう・難聴者の精神保健や心理臨床に強い関心を持ち、それをテーマに研究に取り組んでいましたが、当時の恩師に言われた「臨床を知らないで、机上の空論だけじゃ、良い論文は書けない。」という言葉に取り憑かれたように、しばらくひたすらろう・難聴の子どもたちの心理支援や生活支援など臨床に関わってきました。実践を通して見えたきた答えが、支援のあり方を検証する以前に、ろう・難聴者の精神保健に関わる専門職の養成が課題だと考え、それをテーマに中間評価論文、いわゆる修士論文(高山, 2007:筑波大学図書館で閲覧可能)を提出し、1)ろうあ者相談員や社会福祉専門職を目指すろう・難聴者が増えているが、就労の道が狭いこと(高山, 2008)、2)多くの障害を持つ対人専門職が学会や専門職団体で研修を受けにくい状況(高山・奥野, 2008)があることがわかりました。これらの課題はその後も研究テーマとして継続しており、国際交流や専門職教育の観点から聴覚障害者支援のソーシャルワークの発展を検討した研究として、斉藤・高山・岡田(2014)などがあります。
その結果、設立メンバーとして関わったのが、日本聴覚障害ソーシャルワーカー協会です。また、ろう・難聴者のソーシャルワークをまとめたテキストがないことを痛感し、恩師とともに出版社に掛け合った結果、中央法規出版様より「聴覚障害児・者支援の基本と実践」を出版させていただきました。社会福祉分野で働くろう難聴者の状況とギャローデット大学ソーシャルワーク学部の教育カリキュラムの2章を執筆しました(高山, 2008)。
これがきっかけで、ギャローデット大学大学院ソーシャルワーク研究科で、世界で唯一のろう・難聴者支援を専門としたソーシャルワーク教育を受けてみたいと、日本財団聴覚障害者海外留学奨学金に応募。第2期の奨学生として採用され、大学院博士課程を休学した上で、2006年〜2009年まで留学しました。この留学経験が、研究者として専門家としての大きな転換点になりました。それは、医学モデルによる専門職養成やアセスメントにすっかり色染まっていたのが、大きく文化言語モデルとしてろう者を捉え、臨床に関わるという考えに人生を揺さぶられたのです。留学に関する記事はこちらで読めます(日本ASL協会, 2020)。この経験から、医学モデルとしてのろう・難聴者ではなく、文化言語モデルからろう・難聴者を捉えることの重要性も体感しました。文化言語モデルを学ぶための一つの手段が、ろう者学や障害学でした。
そこから私の博士論文の計画は大きく変わり、私の恩師が定年退官した後の指導教官からは文化言語モデルへの理解が得られず、結果的に単位取得満期退学するまで完成させることはできませんでした。ですが、発達心理学や精神保健を学んだ博士一貫課程は貴重な経験になりました。博士論文を完成することはできませんでしたが、恩師の紹介で、他大学大学院博士課程でろう文化に深い知見を持つ教授のもとで、ろう者学を取り入れての博士論文を執筆、無事に提出しました(高山, 2019:日本社会事業大学の図書館で閲覧可能。2022年度に生活書院様より博士論文「ろう者学とソーシャルワーク教育」を刊行しました。)。これについては、下段の「ろう者学・障害学」で述べていきます。
話を戻し、留学を通して、もう一つの大きな出会いがありました。それは、アラバマ州で開催されている認定精神保健手話通訳者養成制度でした。それまでは、ろう・難聴者に直接関わることができる当事者専門職の養成に血眼になっていたのですが、それではどうしても人材の絶対数として不足するのは明らかで、どうしても手話のできないソーシャルワーカーや心理士による支援も必要になります。彼らの実践のて手助けが可能なのが、手話通訳者です。精神保健専門の手話通訳者の養成あり方について学び、カリキュラムや制度をまとめました(高山, 2018)。
日本に帰国し、東日本大震災などを経験する中で、従来のろう・難聴者の支援枠組みだけでは、どうしてもすくいきれなろう・難聴者がいることに気づきました。そのため、彼らに新しい支援枠組みの選択肢をもたらすために、2018年から遠隔精神保健支援(Tele-Mental health)の研究を行っています(クロウ・高山, 2018)。また、その後の研究では、大学教育や専門職教育の中でろう者学の視点を導入することの効果についても検討しており、心理・社会福祉専門職を対象としたワークショップを通してろう者学カリキュラムの短期的効果を検証した研究として、高山(2026)があります。さらに、大学教育や専門職教育を通して得られた知見は、ろう・難聴者の社会参加や就労、専門職養成の研究にも広がっており、大学教育で得た学びが就労にどのように移転されるかを検討した研究として Myers & Takayama(2019)としてまとめました。
これまでに書いた関連論文一覧
高山亨太・奥野英子(2009)「社会福祉関連学会等における障害のある会員への支援の実態と課題」
リハビリテーション連携科学, 9(2), 119–121.
斉藤くるみ・高山亨太・岡田孝和(2014)「国際交流による聴覚障がい者対応のソーシャルワークの確立をめざして」
日本社会事業大学研究紀要, 60, 219–263.
Takayama, K. (2017). Disaster Relief and Crisis Intervention with Deaf Communities: Crisis Mobilization and Response to Natural Disasters in Japan. Journal of Social Work in Disability & Rehabilitation, 26(3–4), 247–260.
クロウテレサ・高山亨太(2018)「ろうコミュニティを対象にした協働的遠隔精神保健ケアモデルの実践と可能性」 手話と臨床実践, 1, 1–7.
高山亨太(2018)「米国における認定精神保健手話通訳士の現状と課題」手話と臨床実践, 1, 15–22.
Myers, M., & Takayama, K. (2019). Transfer of Learning from Collegiate Deaf and Hard of Hearing Graduates to their Employment Outcome: An Exploratory Study. JADARA, 52(3), 1–21.
Takayama, K. (2020). Understanding Deaf and Hard of Hearing Student Experiences of School-based Social Work Services. JADARA, 53(2), 78–87.
Takayama, K., & Crowe, T. (2024). Asian Deaf and Hard of Hearing Adult Consumers of Maryland Behavioral Health Service System. JADARA, 56(1), 1–29.
高山亨太(2026)「ろう者学カリキュラムの短期的効果の探索的検証:心理・社会福祉専門職を対象としたワークショップを通して」手話・音声言語研究, 3, 19–32.
ろう・難聴者にとって、災害時の情報アクセスや支援体制の不足は、避難行動や心理的回復に深刻な影響を与える課題として指摘されている。特に、警報や避難情報の多くが音声中心で設計されていることにより、ろう・難聴者は災害時に情報から排除されやすい構造的課題を抱えている。本研究は、このような問題意識のもと、ろう・難聴コミュニティにおける災害情報アクセス、災害経験、そしてコミュニティ資源に着目し、災害支援と危機介入のあり方を検討している。
初期の研究では、日本のろうコミュニティにおける災害対応と危機介入の実践に焦点を当て、災害時にろうコミュニティ内部で形成される支援ネットワークやコミュニティ動員(crisis mobilization)の重要性を明らかにした(Takayama, 2017)。この研究は、ろう者が単なる「支援対象」ではなく、災害対応において主体的な役割を果たすコミュニティとして機能していることを示したものである。
その後の研究では、障害包摂型災害リスク削減(Disability-Inclusive Disaster Risk Reduction: DiDRR)の観点から、ろうコミュニティの位置づけを理論的に検討している。Craig, Cooper, Takayama, and Klein(2022)は、障害者の災害支援において、主流の防災政策への包摂と当事者コミュニティによる自律的取り組みを同時に進める「ツイントラックアプローチ(Twin-Track approach)」の重要性を示し、ろうコミュニティがDiDRRの実践において重要な役割を果たすことを論じている。
また、災害リスク削減教育の観点から、米国の大学に在籍するろう学生を対象に、防災意識と防災準備の実態を調査した研究では、ろう学生が大学の防災政策やプログラムから十分に包摂されていない可能性が示され、大学レベルでのDRR(Disaster Risk Reduction)政策の改善の必要性が指摘された(Takayama et al., 2022)。さらに、災害リスク評価の教育実践において、ろう者や障害当事者の視点を取り入れることの重要性も示されており、災害研究と教育の双方において当事者参加型のアプローチが求められることが明らかになっている(Stokar, Cooper, & Takayama, 2025)。
近年の研究では、防災情報のアクセシビリティに焦点を当て、地震早期警報(Earthquake Early Warning: EEW)とろう・難聴コミュニティの関係を分析している。警報が単に発信されるだけでは十分ではなく、言語計画(language planning)や技術的アクセスの整備が不可欠であることが示されており(Cooper et al., 2026)、警報から実際の避難行動へと至るプロセスにおいて視覚的警報やコミュニティネットワークが重要な役割を果たすことも明らかになっている(Cooper et al., 2024)。
さらに、災害レジリエンスの研究では、「脆弱性」だけでなくコミュニティ内部の資源に注目する視点が重要である。Takayama(2025)は、日本のろうコミュニティを対象に、Deaf Community Cultural Wealth の枠組みを用いて災害経験を分析し、言語資本、社会資本、抵抗資本などの文化的資源が災害時のレジリエンスを支える重要な要素となることを示した。この視点は、ろう者を単なる「支援対象」としてではなく、コミュニティの知識と経験を災害支援の資源として位置づける理論的枠組みを提供する。
これらの研究は、災害支援においてろう・難聴者を「脆弱な集団」としてのみ捉える従来の枠組みを再検討し、文化・言語コミュニティとしての視点から災害レジリエンスを理解する必要性を示している。今後は、心理的応急処置(Psychological First Aid: PFA)などの危機介入モデルを、ろう・難聴コミュニティの文化的・言語的背景に適合させる形で発展させ、より包摂的な災害支援の理論と実践の構築を目指している。
これまでに書いた関連論文一覧
Takayama, K. (2017). Disaster Relief and Crisis Intervention with Deaf Communities: Crisis Mobilization and Response to Natural Disasters in Japan. Journal of Social Work in Disability & Rehabilitation, 26(3–4), 247–260.
Craig, L., Cooper, A., Takayama, K., & Klein, H. (2022). Deaf Community and DiDRR Supporting a Twin-Track Approach. Review of Disability Studies, 18(3), 1–24.
Takayama, K., Craig, L., Cooper, A., & Stokar, H. (2022). Exploring Deaf Students’ Disaster Awareness and Preparedness in U.S. Higher Education Settings: Implications for University-Level DRR Policy and Programming. International Journal of Disaster Risk Reduction, 83, 103409.
Cooper, A. C., Cooke, M. L., Takayama, K., Sumy, D. F., & McBridge, S. (2024). From Alert to Action: Earthquake Early Warning and Deaf Communities. Natural Hazards. https://doi.org/10.1007/s11069-024-06719-6
Stokar, H., Cooper, A., & Takayama, K. (2025). Disaster Risk Assessment and Inclusion of Community Members Who Are Deaf or Have Disabilities: An Interdisciplinary, Classroom-Based Collaboration. Journal of Emergency Management.
Takayama, K. (2025). Resilience from the Margins: Cultural Wealth in Japanese Deaf Communities. Journal of Liberal Arts & Minority, 2, 39–66.
Cooper, A. C., Takayama, K., Cooke, M. L., Drakes, O., Sumy, D. F., & McBridge, S. (2026). Deaf, DeafBlind, and Hard of Hearing University Student Experiences with Earthquake Early Warning in the United States: Evaluating Language Planning and Technology Access. International Journal of Disaster Risk Reduction.
ろうあ児施設や聾学校スクールカウンセリングなどの臨床経験を通して、主に、ろう者を対象とした心理・福祉専門職のコンピテンシーや養成方法のあり方について、ろう者学や障害学の視点から研究を進めてきました。
引き続き、工事中。
新型コロナによるパンデミックや国立がん研究センターの障害を持つ患者支援研究プロジェクトへの参加をきっかけにろう者の医療問題に関心を持つようになりました。
引き続き、工事中。